アブサンはワームウッドをはじめとする数種類のハーブを使用して作られるリキュールであるが、ではその製造工程はどのようになっているのだろうか?
超簡単に説明すると
- ハーブをベースアルコールに浸漬
- 蒸留し、少し寝かせる(Verte はその後更にハーブを浸漬して色香り付け)
- 加水してアルコール調節
このような過程でアブサンは作られる。
使用される主なハーブ
・ニガヨモギの花、葉
・グリーンアニスの実
・フェンネルの実
・プティットアブサンの花、葉
・メリッサの葉
・ヒソップの葉
更に生産者によってこれらのハーブを加えることもある。
・スターアニスの実
・リコリスの根
・ミント
・コリアンダーの実
・アンジェリカの根、実
・アイリスの根
、、、等
これらのハーブを使ってアブサンが作られるのだが、アブサンのタイプは大きく分けてVerte(ヴェルテ)とBlanche(ブランシュ)があるのだが、タイプによって作り方が変わってくる。
大きく分けて作り方には2通りある。
「Mixed&Macerate」されたアブサンと「Distilled」されたアブサンだ。
Mixed&Macerate法
製造工程も自由度が高く、品質は生産者のこだわり次第で仕上がりが大きく変わってくる。原料のハーブを全て一緒に蒸留する方法もあれば、個別に蒸留して最後にそれらを合わせる方法など個性が出やすい。低価格、普及品で作られているアブサンに見られる手法。味や香り、色のバランスを調整しながら混ぜていく。
1、高アルコールにハーブエッセンスを溶かし込む方法
人工着色料や、加糖による人工的な甘味を持つアブサンはだいたいこの製法。低価格のアブサンに多い。ハーブエッセンスというのはつまり精油のことであり植物の花、葉、果実、種、根などから抽出した天然の素材のことだ。精油を作る方法はいくつかあり、自宅でもこの方法ならオリジナルアブサンを作ることができる。ちなみに、1891年に出版された有名な薬草酒レシピブック『Nouveau Traite de la Fabrication des Liqueurs』(著:J.Fritsch)にもこちらの方法が記載されている。安価なアブサン作りに用いられるのだが、伝統的な製法のようだ。
2、Macerationする方法
「マセレーション」「マセラシオン」と呼ばれ、ワイン作りなどでも広く使われている手法。ベースとなるスピリッツにハーブなどを漬け込み水溶性・脂溶性の成分を抽出する方法。漬け込んでいるのはハーブだけではなく、昆虫を漬け込んでいるものもあるぞ、、、。
Distilled法
ハーブを浸漬させたベースアルコールを単式蒸留器(ポットスチルと呼ばれるもの)で蒸留し、成分の抽出を行う伝統的な手法。華やかで爽やかな香り、複雑で奥深く魅了される味わいや白濁の変化は「Distilled法」ならではである。この製法で作られたアブサンはとても美しいものばかりだ。
1、Distilled&Maceration法
ハーブをベースアルコールに浸漬→蒸留し、それをある程度落ち着かせたら(蒸留原液)、再度ハーブを浸漬し色付けや香りづけをしている。この行程をcoloring step(カラーリングステップ)と呼ぶのだが、黄色っぽい色や緑色がついているのはマセレーションした時に出てきたハーブの成分だ。基本的には人工着色料を使わないものが多いため色は自然な薄めの色。天然の色素成分を保持するために高アルコールの銘柄が多い。この製法で作られたアブサンはVerte(ヴェール)と呼ばれる。
2、Distilled法
coloring stepを行わず、ハーブを漬け込んだベーススピリッツを蒸留した状態だけの無色透明なアブサンをBlanche(ブランシュ)と呼ぶ。
「えーと、つまり、、Blancheにもう一度ハーブを浸して色付けしたものがVerteってこと??」
実はそれはちょっと違うのだ。(過去に蒸留原液をBlancheとして販売していた銘柄もあったが、、、。)
Blancheは蒸留して「完成状態」となるように原液を作っているが、Verteには最終行程のcoloring stepをしっかり踏んで「完成状態」となるアブサンになるように計算して蒸留原液を作っているのだ。それぞれにあったハーブの配合、やり方がある。
Blancheの中でも、特にスイスにあるアブサンの聖地トラヴェール地方で作られるものはBleue(ブルー)と呼んでいる。スイスブルーとも呼ばれたり。アブサンの禁止を受け、この地域で100年近く密造されてきた歴史と技術の中で生まれた産物だ。