アブサン 聖なる酒の幻
クリストフ・バタイユ 著
辻邦生・堀内ゆかり 訳
まず描かれる舞台は1871年フランスのクリューズ渓谷。
雪が降り積もって、視界も悪い。
普仏戦争まっただ中。
市民の感情も描かれる景色もどんよりしている。
登場人物の一人である少年が、アブサンそしてアブサン造りに魅了され、それを手記の様な形で描かれているのがこの物語の特徴だ。
薄い霧に包まれたような作品。先を急いでは行けない。ゆっくりと足元を確認しながら目の前に現れたものに一つずつ向き合って漂っていくような感じ。
アブサンを造る様子はもちろん、描かれる自然背景の描写や人間の心理的描写がフワフワと漂うそれはまさに霧のようでアブサンの酔いの様。
とても詩的な美しい物語。
時間をかけてゆっくりゆっくり読みたい作品。
また読みたいなと思う。
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